皆さま、「宇宿直彰チェロリサイタル」にお越し下さいまして有難うございました。
大勢の方たちに聴いて頂いて本当に嬉しかったです。
今年は、「チケットぴあ」をはじめ、「東京文化会館チケットセンター」そして当日券が多かったので、予想をはるかに超えた人数でした。
今までは、娘と息子との「レ・クロッシュ」のリサイタルでしたので、チェロとピアノデュオの合わせが楽でしたが、今年は、帰国してからの限られた時間の中での練習でした。
それにも関わらず、多くの方たちから温かいお言葉を頂けて嬉しかったです。
そして、ヨーロッパ アーティスト主催公演の出演者たちも聴きにいらして下さいました。とても嬉しかったです。
前にコンサート本番には色々ハプニングがあるものだ、とお話しましたが、今回も大変な事が起きてしまって心臓が止まりそうでした・・・
息子独奏のバッハの無伴奏チェロ組曲は、全曲で25分程掛かる曲ですので、チェロ本体に”松脂(まつやに)”がついてしまいます。
次のプログラムのサン=サーンス「白鳥」は、とてもデリケートな曲なので、バッハが終わってすぐに戻り、そのチェロの弦につきました”松脂”をアルコールで本人が取りました。
そこまではよかったのですが、ちょっとその助手を務めていた人がうっかり弓の毛にこのアルコールを擦ってしまったのです・・・
そうするとどうなると思いますか?
弓の毛についた”松脂”が取れてしまって摩擦が起きないだけでなく、毛と毛がひっついてしまってだまが出来て音がならなくなります。
この状態になってしまいました!
慌てて、”松脂”をつけても、もうその弓は元には戻りません。
その最悪な状態でとにかく前半はならない弓を使って弾き切りました。
休憩時間にはずっと松脂で応急処置をして、大曲のフランクのチェロソナタを弾きました。
何とか最後まで弾き切りましたが、心臓が張り裂けそうな経験をしました。
舞台で譜めくりをしていた私の心臓の鼓動が客席に届いていたのではないでしょうか?
コンサートは水ものですので、いつ何が起きるから分かりませんが、音色が命である演奏会でこのような事が起きてしまい本当にがっくりしてしまいました。
しかし、言いわけしてもはじまらない事です。
私自身はというと・・・ならない弓をよく動かして弾き切ったものだ、とただただプロ意識の息子に感心させられました。
お客様側からすれば、せっかく高価なチケット代金をお支払いしてのコンサートでしたのですから、最高の出来のものをお聴かせ出来ずに本当に申し訳なく思います。
聴きにいらして下さいました方たちにこの場所をお借りしてお詫び申し上げます。
これに懲りずにまた是非聴きにいらして下さると幸いです。
しかし、演奏を心から喜んで下さった方も多くいらしたので、「音は響かなくても心では音楽を奏でていた!」と思います。
私はマイナス志向ではなく、いつもプラス志向です。
今後は、このような間違えは起こさないと思いますし、どんな時も温かく見守って下さるお客様に心より感謝しています。
全く見知らぬお客様との間でも音楽で通じ合っていると思うと、不思議な友情が湧いてくるものです。
先月弓の毛を張り替えましたが、今日壊れてしまった弓の毛を新しくしてきましたので、来週の本番は大丈夫です。
5月15日(土)は、福島公演の「いわき芸術文化交流館 アリオス」で、同プログラムのコンサートがあります。
こちらは、「ヨーロッパ アーティスト」主催公演ですので、身を引き締めて、充実した時間をお客様と共有できたら幸せに思います。
自分の頭で工夫すれば、その苦労と努力が”力”になっていきますから、よりよい工夫をして、着実に希望の道を歩みたいと思います。
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