芸術鑑賞の日

皆様、暑い日が続いていますが、お元気でいらっしゃいますか。
今日は珍しくどんよりした一日でした。
このところ、7月上旬の暑さだそうですが、これから湿度が上がってきますので、少しずつ空気が重くなってくるのでしょう。

今週の日曜日は、東京文化会館 小ホールに聴く側として、コンサートに参りました。
東京文化会館に着きますと、自然と楽屋口に足を運んでしまいそうになりましたが、入り口から客席の方へと歩いていきました。
いつもと様子が違います。

K君のラヴェル全曲演奏会という事で、ラヴェル好きの私は楽しみに出かけました。
スカロボは、お得意の曲ですが、パリで聴いた時よりもやはり大人の演奏に変わっていて、嬉しかったです。

長時間に及ぶリサイタルで大変だったと思いますが、是非今後も頑張って欲しいと思います。

聴きながらつくづく実感したことは、ラヴェルの音を出すことは、本当に難しいということです。
以前40年近くパリにお住まいのピアニストのEさんが我が家に遊びにいらして、娘の「水の戯れ」を聴きながら、「私は、ラヴェルの音を理解するのに、数十年の歳月を費やし、ようやく理解し始めたと思っていたのに、やはり幼児期からずっとフランス語を話し、フランスで生活をしていると、意識せずに、ラヴェルの響きが出来てしまうのですね〜うらやましいわ!」
とおっしゃいました。

確かに、日本人のラヴェルの演奏を聴きますと、その意味がとてもよく理解出来ます。
ドイツ音楽とはそもそも響きの要求するところが違いますし、フランス人の耳を持たない限りフランス音楽の音の余韻を理解することは難しい事だと思います。

以前も話した事ですが、娘がコルマールのコンセルヴァトワールに通っていた頃に、ソルフェージュの先生は、授業中、ラヴェル「水の戯れ」の聴き比べをなさいました。
その時は、アルゲリッチの演奏と娘が師事しています、ラヴェルの孫弟子のジャック・ルヴィエのCDの聴き比べでした。
子供たちには、CDを聴かせるだけで、演奏者名は伏せて聴かせました。

2人の演奏を聴いたあとに、先生は、「どちらの演奏が好きですか?どちらがラヴェルの音楽に聴こえましたか?」という問いに対し、30人中30人全員、ジャック・ルヴィエの演奏が素晴らしいと応えました。
アルゲリッチの演奏に対して、小学生の子供たちは、「こんな演奏ラヴェルじゃないよ!」と口々に言っていたそうです。

それは、フランス人だからフランス音楽を自然に感じる力がついているからだと思いますが、国が違えば、表現する音質や好みの音色が違うのですから、とても面白い事だと思いました。

ピアニストの大家である、故リヒテルの「ラ・ヴァルツ」の演奏は、ラフマニノフの音として聴こえてくるとフランス人は言いますが、リヒテルの血は、ロシア人ですから、これは当たり前の事です。

中々難しい事ではありますが、アーティストが一生懸命に向かう姿は素晴らしいと思います。

東京文化会館での鑑賞後には、目黒にございます、雅叙園に参りました。
「百段階段」の7つの間を使いまして、「いけばな百段階段 2015」の展覧会が開催されましたが、17日は最終日ということでしたので、山手線に乗り、急いで参りました。

東北のコンサート主催のE様からご招待を受けましたが、私としましては、「いけばな」の展覧会に伺う事は久し振りというよりも滅多にありません。

「いけばな」を美しいと思う心はございますものの、大学時代に市のサークルで習った経験しかない、ほとんど素人です。
それでも、E様の姪子さんがご出展されている事で、楽しみに伺いました。

目黒雅叙園は、結婚式場だと思い込んでおりましたが、第3号館は、東京都指定有形文化財「百段階段」として、素晴らしい文化財でした。
このような事も知らず、日本人として恥ずかしい限りです…

階段の厚さ役5?のケヤキ板の感触は何とも言えませんでしたし、階段で結ばれた7部屋は、それぞれ趣向が異なり、装飾担当の画家の氏名が記載されていました。
7つの間では、立派な天井、襖の柄との調和が取れた、素晴らしいいけばなが輝いていました。
目の保養をさせてもらい、じっくり楽しませてもらいました。

「いけばな」と申しましても、流派により、それぞれの花の表現の仕方、木や花の種類、枝や花の芸術的センス、花を挿します花瓶など、全く違います。

「いけばな」も音楽と同じように、表現の仕方は自分の持っている芸術観により違いますし、好みもいろいろあるのでしょうね。
正しいとか間違っている、というものではなく、感じ方によりすべてが変わってくるものなのだと思います。

芸術は、やればやるほど奥が深く、解決するまでに長い時間を要する、と言われますが、確かにそうですね。

芸術は、「幸せ〜」と思う気持ちが一番大切で、音楽に対しても、その幸せの度合いは人により違いますし、もちろん、好みが違うわけですから、満足する度合いも違います。
最高に幸せなものに巡り合えたなら、それは幸運なのだと思います。

和食が好きな方、洋食が好きな方がいるように、すべてその人の感覚なのですね。

やはり、芸術ほど素晴らしいものはないような気がします。

では、皆さま、お元気でお過ごし下さい。

コメント

タイトルとURLをコピーしました